News
会陰ヘルニアをご存じですか? [News]
お尻ばかり続き恐縮です。今回は、会陰ヘルニアの情報です。
14歳、ハスキー、雄。
数か月前から便秘状態で、便が2週間も出ない状態が続き、ワンちゃんも飼い主さんも「くたくたに疲れ果てて」来院されました。
ヘルニアと言えば、椎間板ヘルニア(背骨)、鼠系ヘルニア(股)、臍ヘルニア(ヘソ)が有名ですが、今回は、老齢の雄犬にしばしば見られる会陰ヘルニア(肛門脇)をご紹介します。
会陰部とは外陰部と肛門の間を示し、肛門周囲の筋肉群がホルモンバランスの崩れにより、筋肉が萎縮し、そして、その隙間から、腸、膀胱、大網などのお腹の臓器が脱出する病気のことです。
●特徴
老齢の雄犬に多く発生する。
●症状
直腸が隙間から脱出するので、排便が困難になる。便が出にくくなるため、あたかも便秘をしている様に見られることもある。膀胱が脱出し、閉塞を起こした場合には、急性腎不全に陥ることもある。
●治療
脱出した臓器を腹腔内へ戻し、その隙間を骨盤に付着する筋肉を剥がし筋肉弁として、その穴埋を行います。また、直腸の腹側にもヘルニアが見られる場合には、太ももの後ろ長くて大きな筋肉を利用して、穴埋めを行います。
そして、同時に去勢手術を行います。
●注意
老齢の雄犬で、便の出が悪く感じた場合には、上記の病気を考えて、早めに検査においで下さい。また、定期的に肛門周囲をチェックすることも忘れないでください!
●その後・・・。
まだ、左側の手術しか終わっていませんが、数か月の苦しみから解放され、便が「ドー」と出るので、ワンちゃん、飼い主さん共にとってもハッピーです!
1か月後に右側の手術を行う予定です。
様子を見すぎた?ビックな肛門周囲腺腫! [News]
肛門部分しか写っていませんが、シーズーのチャッピー、15歳、オスです。
2年前に小さなシコリを発見したそうです。年齢的高齢であることから、様子を見続け、ついに、こんなに大きくなってしまいました。
病理検査後の診断名は、肛門周囲腺腫でした。
この病気は、雄のホルモンが関与してし、肛門の周囲に発生する腫瘍です。
悪性の肛門周囲腺癌では、骨盤のリンパ節へ転移することもしばしばで、大がかりな手術になることもあります。
手術は凍結手術を行いました。
現在、腫瘍がほとんど消失し、飼い主さんも、チャッピーちゃんもハッピーです。
今後、もう少し治療は続きます。
いつも、皆様に繰り返しますが、腫瘍は、自己免疫力が低下して発生します。
ですから、年寄りに多くて当然の病気です、「年だから」と諦めず、小さな異常を発見したら、速やかにご来院ください。
多くの飼い主さんの心配は、年寄りなのに麻酔をかけて大丈夫?ととてもご心配されますが、手術前に身体検査、血液一般、生化学検査、胸部レントゲン検査(超音波検査)を行し、麻酔に耐えうる状態を確認して行いますので、ご安心ください。
肛門左側に大きく盛り上がった腫瘍。
便は出ていますが、これ以上大きくなると、排便障害を起こすこともあります。
1回目の凍結手術後、2週間目です。
ほとんど腫瘍は消失しています。
3週間目です。
一周り、小さくなりました。
4週間目です。
お友達を粗末にしていませんか!? [News]
私は、学生の頃ラグビーをやっていました。
当時は、芝生のグランドなど存在していませんから、固い土の上での練習では、生傷が絶えませんでした。そして、毎晩、風呂上りにその傷口に薬を塗り込みながら、「いた、いた、痛〜。」「フーフー。」「ぎゃーぎゃー。」と、叫びながらの消毒処置を、今でも鮮明に思い出します。
当時の処置内容は、ヨーチンあるいは赤チン(赤チンは途中から水銀が含まれるので製造中止)をつけて、すぐにウチワで扇ぎ、傷を乾燥させることでした。傷には、「ヨーチン、赤チン」が合言葉で、その後、傷を乾燥させて早くかさぶたを作るという概念でありました。
数年前からは、傷には消毒薬、抗生物質をできる限り使用せず、湿潤状態にして治癒させることが正しい方法と言われるようになりました。なざならば、その消毒薬は皮下組織にダメージを与え、よけいに治癒を遅らせてしまうからです。今、考えてみれば子供の頃の消毒の痛みは、体が傷ついているサインだったんですね。
そうそう、それから「うがい」についても同じです。以前は、イソジンでうがいを繰り返し、風邪の予防を勧められていましたが、頻回にうがいを繰り返すことで、正常細菌叢を失い、カビが繁殖したりします。(しかし、風邪の初期のみは、ウイルスを殺菌するために良いようです。)
正常細菌叢とは、皮膚、口の中、腸に存在する細菌のグループのことです。また、その細菌のグループは良い物、悪い物と存在し、そのバランスは、上手い具合に調整されています。そして、バランスを保ちながら、他の菌の進入を防いでいるのです。それから、腸の細菌は、免疫にも関与しています。ですから、バランスが崩れると、皮膚、口では感染症、腸では下痢が起こります。
簡単に言えば、我々は細菌と共生しているのであって、けっして細菌を悪者と過剰に反応する必要はないのです。むしろ「お友達として大切にすべきなのです。」一時期流行った抗菌グッツなどは、ナンセンスであり、菌を殺すほどの化学物質が含まれる訳ですから、逆に恐ろしくさえあるのです。
傷治療に関する結論は、消毒薬、抗生物質をできるだけ使用せずに、傷を湿らせて、上皮再生を促し、自己修復力を応援することなのです。
自分の体に存在するお友達を大切に気づかって、自ら傷つけ、むやみに排除ることなく、自己免疫力を低下させないように意識する必要があるのです。
院長 石崎俊史