犬の犬歯抜歯後の再被覆術 [News]
●ダックスフンド 10歳 ♀
「数か月前、歯石除去の際に抜歯を行い、口腔粘膜による被覆術(フラップ)を行ってもらい、しばらくは良かったのですが、どうも穴が開いているようです?」という主訴で来院されました。右上顎犬歯部は、窪みがあり拡大鏡で観察すると小さな穴が開いているのが分かりました。
●再手術
残念ながら、この状態を観察していても穴が塞がらないことをお伝し、当方で再手術をさせて頂くことにしました。2度目の手術ですので、短くなっている口峡粘膜をカバーするために大きめの切開が必要になります。
●縫合
口唇粘膜と硬口蓋の高さを合わせて丁寧に縫合しました。
●左側犬歯部分は、はっきりとわかる穴が開いていました。右側同様の処置を行いました。
●縫合は血行確保のために術後の組織短縮による牽引を見込んで大きめの被覆弁を形成し、硬口蓋粘膜と口唇粘膜の高さを合わせて被覆弁を丁寧にあつかい縫合する必要があります。ちなみに、穴を放置していると食べ物が鼻に入り、クシャミ、慢性鼻炎を発生することになりますので、積極的に被覆することをお勧めします。
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鳥の腫瘍 [News]
●ピヨコ 4歳 セキセイインコ ♀
昨年から発見されていた尾脂腺における腫瘍がいよいよ大きくなり、気にして嘴でつつくことで出血が止まらなくなっていました。この度、覚悟を決めて決死の切除にトライしました。
●凍結手術
炭酸ガスレーザーで除去を試みたもの、腫瘍塊が大きく、その都度出血が起こります。途中から液体窒素による凍結手術(約−20度)に切り替えることにしました。
約1時間30分にわたる処置でした。一番の問題は、凍結溶解後の腫瘍塊からの持続的な出血でした。染み出てくる血液すべてを丁寧に止血する作業が続きました。この間約1時間。
●覚醒直後
こびりついた便と羽を整理すると、随分とこじんまりとしてしまいました。徐々に壊死が進み約2週間で腫瘍が完全溶解する予定です。
状態が悪い中、冷冷の手術でしたが、無事に終了し安堵しました。
●7日後
7日後にご無事な姿で来院されました。腫瘍はほぼ壊死(お尻についている黒い殻)して、数日後には落ちると思われます。インコか?ひよ子か?分からない姿になりましたが、出来物が取れて元気になることが何よりです、もうひと踏ん張り、頑張ろうー!
●1ヶ月後
嘴の矯正とエネルギー充電に来院されました。尾の部分から羽が生え出し、ヒヨコから本来のインコへ再生しつつあります。(笑)
いたって元気で、絶好調だそうです。
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猫の子宮脱 [News]
●野良子 雌 ?歳
主訴は「出産後お尻から何かが出て、グッタリしている。」でした。出産後間もない子猫5匹を一緒に連れて来院されました。野良ネコ出身なので随分と怯えています、胎盤が出ているものと想像していましたが、そっとお尻側を拝見するとそれは胎盤ではなく、見事に子宮が反転して出ている、つまり子宮脱だったのです。
●反転した子宮
出産後に反転し時間が経過しているため、ずいぶんと傷んでいました。
●血液検査
早速、反転した子宮を戻し縫合し、手術の準備のための血液検査を行いました。問題だったのは、子宮脱による血液量(PCV)の不足、たんぱく質の不足が顕著でした。最低20%の血液量が欲しいのですが12%。たんぱく質であるアルブミンは最低2.0mg/dlは欲しいのですが1.8mg/dl。体温36.4(正常38.5)度。これらの結果より緊急手術は延期することにしました。
手術を延期して、まずは状態を改善する計画と決めました。しかし、それからが大変でした。体温はさらに低下し、食欲は初日のみ、低たんぱくが進み胸水が貯留し呼吸困難を起こす日々が続きました。さらには、脱出を戻した子宮が感染する問題が生じました。
対応には、胸腔チューブを10日間留置し、鼻カテーテルから栄養補給を行い、丁寧に献身的に看護を行うことで状態が徐々に改善し警戒心も取れてリラックスできるようになりました。
●卵巣子宮摘出
入院から16日目にPCV26%、アルブミン2.4mg/dl、食欲旺盛、呼吸正常に復したため手術を行うことにしました。
一時期感染して子宮から膿が大量に排出されていましたが、摘出時には綺麗な状態(下写真)に復帰していました。
●今日は抜糸の日
手術から10日目、抜糸に来院されました。生まれた5匹の子供達は3匹になっていましたが、出産後直ぐに親の代わりとなった飼い主さんは、大変良く頑張られました。
我々を思い出してくれたのか、抜糸の際には笑顔で迎えてくれました。めでたし、めでたし,良かったね。