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突然の脾臓破裂と虚脱! [News]
●セナ、突然元気なくなる
いつも、元気過ぎるセナが、突然大人しくなりました。
飼い主さんも直にその異常に気づき、翌日、夕方に来院されました。尻尾を振る元気はありますが、明らかに、いつもと別人のセナに変貌しています。
●超音波検査
触診にて腹部の異常を感じ、直に超音波検査を行いました。プローブを当てると同時に、目に入ったのは、腹水と脾臓の異常所です。下の約10cmの丸い塊が見られました。
●即、手術決行!
貧血著しく、血圧低下。出血が持続していると予想できます。
急ぎ、血圧を上昇させる処置を施し、全身麻酔に耐えれる身体に戻す作業を行います。「皆、急ぐぞー!」
そして、麻酔。(スタッフ一同、一番緊張する時間です)
●脾臓摘出
お腹を開けると、大量の出血があります。その出血をある程度吸引して、脾臓を慎重に取り出し、急ぎ切除しました。
最後に転位の有無を確認して、お腹を閉じました。
下の写真は、腫瘤でパンパンになった脾臓の膜が破れているのが分かります。脾臓は血管の塊です、これが弾ければ、大量出血が起こります。
●脾臓の全体像
尾側に大きな腫瘍が見つかりました。
手術中の細胞診で、悪性所見が見られましたので、急ぎ全摘出を行いました。
●大網に見られた小さな腫瘤
手術後の細胞診で悪性所見が見られ、転移?が予想されます。
●一日遅ければ・・・
お腹の中には、約2000mlの血液が漏れ出ていました。突然の持続出血により、ショック状態におちいり、来院時には、血圧も低下していました。
この出血が続いていてば、たぶん、翌日まで持たなかったと思います。
●翌日のセナ
翌日は、昨日の状態が嘘のようで、いつも通り、元気になって、精一杯、尻尾を振って迎えてくれました。
紙一重の手術でしたが、これまたいつも思うことは、特にゴールデン、ラブラドルの犬種は、7歳を過ぎたら、必ず、超音波検査を積極的に受診して欲しいと思うのです・・・。皆さ〜ん。進んで超音波検査を受けましょう!
また、この手の手術は、いつも夜遅くなります。いつもながら思うことは、多くの飼い主さんは、数日、あるいは、1日前には、異常に気づいているはずです。夜の手術は、体のホルモン分泌低下、スタッフの人数から言って、日中より安全性が低下します。ですから、手術は午前中に行うのがベストなのです。皆さ〜ん。異常に気付いたら、直に来院しましょう!
●術後5日目
飼い主さん曰く「物凄く元気で、いつもに戻りました!」嬉しい限りですが、この度、今回の大量出血における回復具合を調べました。血液を薄く引き延ばし、体がどのぐらい頑張って貧血を治そうとしているのかを測る検査です。
右の写真の青く大きな丸型が若い赤血球です。セナの骨髄が一生懸命頑張って、血液を増やそうとしている状態が分かります。
●病理結果
病理診断では、残念ながら・・・想像通りの血管肉腫でした。血管肉腫は、非常に転位率が高い(70〜80%)と言われています。
気になっていた大網の腫瘤には、転移がみられず、肉眼的に肝臓はとても綺麗でしたので「ホット」しています・・・しかし、油断はできません。これから、飼い主さんと一緒に「セナちゃん」の免疫増強に努め、長生きできるように頑張ります!
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腸重責!(腸の中のできもの) [News]
●メイ ♀ 11歳 マルチーズ
4日前から食欲がなく、フラフラしているとの話でした。
血液検査では、血液量は正常範囲ですが、以前からの血液データーでは、貧血が疑われました。血液を引きのばし、赤血球の形態を観察すると、再生像が盛んにみられるので、他の原因を除外した結果、どこかで、持続した出血がある?ことが予想されました。
●身体検査では、痛みも無く、腹部触診にて異常は感じられませんでしたが、病歴と検査より追加の超音波検査を行いました。
上下共に腸重積に伴なう多層構造、塊状病変と思われる高エコー所見が観察されました。
●手術が決まりました!
腸の超音波検査から手術を行う決定をしました。
また、身体検査で雑音が聴取されませんでしたが、手術前に心臓のレントゲン検査、続いて心臓の超音波検査を行いました。(老齢のケースは、手術前にできるだけ検査させていただいています。)すると、左の弁(僧帽弁)に逆流があることが分かりました。前尖(前側の弁)には、大きな粘液変性が目立ちます。
●この検査により、術前の麻酔薬の選択、そして、術後の処方が変わりますので、老齢であれば、どなたも必須項目としてご依頼いただいたいと思うところです。
●手術開始。
腸に腸が重なった重積状態で発見されました。腸を部分的に切断し、縫合したところです。次に、切開創から、リンパ節、その他臓器を観察しましたが、肉眼的には、異常はありませんでした。(一安心)
●重積部分を引きのばした写真です。中央部分に腸管内腫瘤が発見されました。どうやら、この重積は、この腫瘤が原因のようです。
●4日間何も口にしていませんでしたが、翌日から食欲が出て、顔色も良くなってきました。3ヶ月前から、だんだんと痩せてきていて、手術前数日は、食事を取れず、薄々と状況が悪いとに気づいていた飼い主さんでしたが、なかなか病院に連れいけなかったことを悔やみ、そして、ほぼあきらめ、覚悟を決めて悲しみに暮れていたのですが・・・。
しかし、3日後にはしゃぎ回るメイちゃんと対面して、手術立ち会いの時に流した涙とは違う、喜びの涙を流しながら感動の再会となりました!思わず我々スタッフも皆幸せになりました!
●病理診断結果
組織の診断結果は、良性の平滑筋腫でした。浸潤増殖などの悪性所見は、観察されず、切除範囲も完全でした。「良性より、転移、再発は無し」との結果に、一同、ビックスマイルでした!11歳のメイちゃんですが、これからは、心不全の進行を出来るだけ抑えて、長生きしてもらいたいと思います。
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膀胱鏡(ぼうこうきょう)使用症例の詳細 [News]
●尿に血が混じるといる主訴で来院されました。
超音波とレントゲン写真で尖った感じの結石が膀胱内に確認されました。尿検査の結晶検出から、食事療法では溶解することができなタイプと分かり、外科的アプローチを決定しました。
●手術室へ移動する前、硬膜外麻酔を行い痛みを管理します。そして、臍の上方に5mm切開を加え、カメラを挿入し、次に、ペニスの側方に約1.5cmの切開創を加えます。(膀胱鏡を使用しない場合には、膀胱を腹腔から外に出すので、通常の皮膚切開創は約5cmになります。)
●臍の横に開けた5mmの穴からカメラを挿入し、膀胱の位置を確認します。そして、ペニス横の穴から鉗子を挿入し、膀胱を把持します。鉗子穴を少し大きくし膀胱を少しひきだし、膀胱壁と腹壁を縫合固定します。
●膀胱に5mmの切開を加え、膀胱内を観察します。
「あった、あった!」レントゲン、超音波で確認済みの例の結石が見つかりました。
こんな、トゲトゲであれば、膀胱粘膜もダメージがあるはずです。
●結石をカメラ付き把持鉗子で捕獲し、膀胱より取り出します。
●その後、膀胱内を一周して、小さな結石が残っていないか観察、検査します。
「あった、あった、ここにもおったぞー!」
●同じくカメラ付き把持鉗子で、小さな結石も残らず採取、除去します。
●結石を取り終わったら、膀胱内と尿道移行部を観察します。(ここによく、結石が集まる)慢性膀胱炎の影響で、荒れた膀胱内粘膜が見えます。
●膀胱を元に戻し閉腹した後、臍の横の穴から、カメラでお腹全体と術後の出血を観察します。こちら、肝臓と胃が見えてます。
●「とったドー!」
無事に以下の結石が除去され、切開創が小さく、ダメージが少ないので、その日の夕方には帰宅となりました。目出度し、目出度し。
●膀胱結石は、出血、膀胱炎を併発することが多く、血尿の症状だけで、膀胱炎を決めつけずに、レントゲン、超音波を用いて、膀胱、腎臓と併せて検査する必要があります。
尿が「赤い」「出血が混ざる」時には、速やかにご来院ください。