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全耳道切除術 part 2 [News]
●両側慢性外耳炎
ロッコ、柴犬、9歳、♀。1か月前から耳を痛がっていると来院されました。耳切除を薦めましたが、点耳薬でなんとか治したいとの希望でした。しかし、3週間後、改善が全く見られない為にこの度の手術に踏み切りました。
●手術
今回は、耳道が石の様に硬く大きくなっていたので、鼓室(鼓膜の奥の部屋)まで到達するのに時間を要しました。鼓室を綺麗にして、個室の骨を部分的に切除し、個室内の堆積物を除去し、そして、耳垢分泌物の細菌培養を行い、排液チューブを装着して終了しました。
●切除した耳道
石のように硬くなった耳道です。
左右ともに石でした!
●術後
排液チューブを抜いた5日後の写真です。
痛みも随分とおさまり、少し不機嫌ですが、長い間の苦しみから解放されるのももう少しです。
●形成後の耳道
最初の写真の様にボコボコしていた耳の入口は、この様にすっきりしました。今後は、痒みで苦しむことは無くなります。お疲れ様でした!
●まとめ
慢性外耳炎の多くは、アトピーなどの基礎疾患が関与していることが多いですが、放置すると慢性化してしまいます。そして慢性化が進むと鼓膜が破れ鼓室まで耳垢が溜まってしまいます。管理のできない慢性化した外耳炎は、手術行うと炎症が無くなり、通院の必要が無くなりますのでお勧めかもしれません。耳を取る手術と言うと皆さん吃驚しますが、見た目の外観は、ほとんど変化は見られません。
慢性外耳炎でお困りの方、一度ご相談ください。
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大変でした!550gの横隔膜ヘルニア [News]
●サクラ2カ月♀三毛猫
横隔膜ヘルニアとは、胸と腹を分けている薄い膜が破れて、お腹の臓器が胸腔内へ入り込んでしまう状態を言います。
この度、小さな子猫が呼吸困難で運び込まれました。しばらく経過を観察し、状態を改善させてから手術を行う予定にしました。
肺は空気で充満されていますから黒く映ります。しかし、腹部臓器がたっぷり入ったサクラの肺は圧迫され、左の後葉の一部分しか空気が存在していません。呼吸困難でかろうじて生きています。食事は食べたいのですが、呼吸が苦しくて一口食べただけで死にそうになります。一刻の有余もないので、緊急手術に踏み切りました。
●ヘルニア穴
まずは、麻酔管理が大変でした。呼吸できる肺が少ないので、十分に酸素化して血管から麻酔薬と鎮痛薬を投与しました。ここからが、また大変で胸が思うように膨らみませんから、小さな胸の膨らみをみながら、呼吸を調整していかなければなりません。
安定させた所で、急ぎ手術室へ運びます。
たぶん、交通事故だと思われますが、横隔膜の50%ぐらいに大きな穴が開いていました。その穴を通じて、肝臓、小腸、膵臓、胃が入り込み、肺を圧迫していました。小さな体ですので、指をいれるだけでスペースが無くなります。注意深く臓器を取り出して、大きな穴を閉鎖。お腹を閉じる前に胸の空気と液体を抜くためにカテーテルを挿入しました。
●術後
手術中に一時期、血圧が低下することもありましたが、急いで手術を進めました。術後の覚醒は順調でしたが、酸素濃度が低めです。急いで鼻に酸素チューブを装着しました。小さな体(550g)で本当に良く頑張りました!しかし、術後しばらくは、体温、血圧、酸素濃度を定期的に測定します。気が抜けません!
●ICU
数日間は、集中治療室で管理します。前足から鎮痛剤と細胞外液が持続的に流れます。足先には、酸素濃度を観察するモニターが装着され、胸のチューブからは、肺の隙間に存在する空気と液体を抜きとります。傍には、応援団のスヌーピーが寄り添います。
●術後のレントゲン
呼吸も落ち着き、胸からの空気、液体が抜けなくなったので確認のレントゲンを撮りました。
最初の写真と比べると胸の大きさも格段小さくなり、何より肺に空気(黒)が入っているのが分ります。食欲も日に日に出てきています。これで一安心です。
●五日後のサクラ
呼吸が苦しくて食事がとれなかったサクラは、術後5時間で美味しそうにミルクを「ペロペロ」と飲みました。翌日は、「みゃ〜」と可愛い声で応えてくれ、流動食も「ペロリ」。揉み揉みしながら喉もなでてくれと催促します。この写真は術後5日後です。見違えるように元気になり、呼吸も安定しています。数日後に退院です。元気でね〜!
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元から断たなきゃ駄目! [News]
●オーマイガット!潰瘍も発見!!
ダックスフンド 11歳 ゲット
最近の当院のホームページをご覧になって、同じような状態と感じ、急いで来院されました。歯石が大量に堆積した影響で、その歯石の上にかぶさる唇に潰瘍ができてしまいました。かなり痛みのある日々が続いていたと思います。また、大量の歯石が堆積し、まるで山口県の秋吉台の鍾乳洞の様です。
●エナメル欠損と残根
歯の表面は固いものを砕く為にエナメル質で覆われています。そのエナメル質の一部が無くなり、その下の象牙質が溶けて折れてしまい、根だけが残ってしまいました。歯の根が残ると炎症が治まらないので、高速バーで周囲を削って摘出します。
●残根
抜歯した数本の歯と3本の骨に残っていた歯の根です。
●歯周靭帯喪失
歯肉の深さを測定します。検査の手順に含まれる一つですが、ご覧のとおり検査プローブがどこまでも入ります。
鼻の腹側の骨は薄く、歯の根の部分で感染がおこると鼻と歯がつながり、くしゃみが持続的に発生します。ここまで歯石がひどいケースでは、多くの歯の根に歯石が侵入して歯と歯肉を繋ぐ靭帯を破壊してしまいます。
●ただよう香り
ここまで、酷いと臭いも相当なものです。歯石除去後は、当然匂いも無くなり、どぶの香りからサフランの香りに変わりました。飼主さん共々さわやかな日々を送れることはとても素晴らしいことだと思います。次に大切なことは、この状態を維持することです。食事の変更と歯磨きは必須事項になります。
ということで、数m離れていても漂う香りは、歯石と口内炎が原因でした。飼主さんには、匂いの元に早く気付き、その匂いの元を断たないと解決しないことをもっと早くから気付くべきであったと後悔されていました。今日から頬ずりも気持ち良くできると思います・・・・。