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唾液腺切除 [News]
●チャイ♂8歳トイプー
耳の下に大きく膨らんでいるのが閉塞を起こした唾液腺です。1月から腫れたり、引いたりを繰り返していましたが、麻酔に不安がある心配性の飼い主さんは、手術を躊躇していました。ついに、決心がついたところ、手術間際に自己免疫性溶血性貧血になってしまい延期を余儀なくされました。
今回、貧血から回復し、ようやく重い腰が上がり晴れて手術となりました。
●唾液腺切除
唾液腺を周囲の組織から分離、縫合して切除します。首の周辺は、大切な神経、血管が位置しているので慎重に進めなければなりません。時間経過が長いため、剥離に時間を要しました。
●歯石除去前
以前から、歯石除去をお勧めしていましたが、この度、唾液腺除去と一緒にして欲しいとの依頼により行いました。人間の世界であれば、一緒にすることは先ずありませんが、我々は、歯石除去も麻酔をかけなければならないので、しばしば一緒にさえて戴くことがあります。
●歯石除去後
歯石が堆積していた割には、歯ぐきが下がることもなく、歯周ポケットも正常範囲でした。これで、頬ずりすると爽やかな香りがすることでしょう。これからは、食事管理と歯磨と定期チェックで輝く歯を維持していきましょう!
●術後7日目
3日目にかなりの浮腫とともに皮下出血を生じました。4日目に排液チューブを抜き、7日目には腫れと出血が治まりました。飼い主さんも、当初は「痛々しくて手術するんじゃなかった」と心配された様ですが、後は抜糸を待つのみとなりました。御心配をおかけしましたが、数日後に終了です。ご苦労様でした。
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慢性の嘔吐と下痢 [News]
●レオ チワワ 7歳 ♂
1ヶ月前から下痢と嘔吐を繰り返していたそうです。そして、癌、異物はなく、膵炎の疑いと診断されたそうです。数日前に、飼い主さんの紹介で来院されました。
●超音波検査
触診で異常を感じましたが、超音波検査を行うと明らかに腸の問題が発見されました。大きく肥厚した一部の腸管および塊(腸管膜リンパ節?)があります。
●肥厚した小腸
血液中のアルブミン(たんぱく質)が時間をかけて低下していので、このままでは麻酔はかけられません。点滴、そして輸血をしてアルブミンを上昇させて手術を行いました。かなりの広範囲で腸管が肥厚、硬結していました。この腸であれば、下痢もいたしかたありません。嘔吐と下痢を止めるべく、異常部位の部分切除を行いました。
●腸管吻合
肉眼的に異常が見られる部分を広範囲に切除し、腸の断端を縫合しました。腸管膜リンパ節は大きく腫れあがっています。経験的にリンパ腫を強く疑います。
*低蛋白を伴う代表的な消化器疾患(下痢、嘔吐)は、リンパ腫、蛋白漏出性腸炎、炎症性腸炎があります。しかし、下痢がない場合もあるので曲者です。
●その後
手術前までは、飼い主さんが無理矢理に食べさせていたそうです。しかし、嘔吐と下痢は続いていました。術後2日目からは、自身が進んで食事を欲するようになってきました。嘔吐もありません。顔色も良く気分も落ち着いています。嬉しい限りであります。
●細胞診所見
腸の腫れあがった部分から材料を取り、細胞の検査を行いました。病理結果で確認をとりますが、未熟リンパ球が多数認められ、典型的なリンパ腫です。急ぎアメリカの腫瘍専門医に連絡をとりました。彼女は、マイルドな抗癌剤療法を勧めてくれました。私自身は、消化器型リンパ腫には、抗癌剤の期待は薄く、それを使用する事に否定的で迷うところですが、飼い主さんとじっくりと相談の上、治療方針を決めていきたいと思います。
●追伸
連続2週間以上、嘔吐、下痢が続けば慢性の消化器疾患と言えます。どこかに何らかの問題が発生していると考えられるので、早い段階で詳細な検査を受けることをお勧めします。