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猫の膿胸 [News]
●ボブ11歳ヒマラヤン♀
2日前から食事を食べないとの主訴でした。そして、10日前にビニール袋を食べた形跡があったとのことです。飼い主さんのお話と状況が食い違うところがありましたので、翌日に検査をさせていただきました。
●膿胸とは、胸に膿が溜まってしまう病気です。原因は喧嘩による深い咬み傷によるものが最も多いと言われます。このレントゲン写真は、胸腔に膿がいっぱい溜まった状況が見られます。空気の入った肺は、右側に僅かに見られるのみです。
●胸腔貯留液の検査
ボブちゃんは外に出ませんので喧嘩が原因とは思えません。膿胸は潜在性で末期になるまで症状が分らないので重篤になって見つかることがほとんどです。まずは、膿胸か胸水かを鑑別するために試験的穿刺を行いました。
●処置
処置は、胸に廃液用のチューブを設置し、そこから膿を抜くことを一日数回繰り返します。そして、膿が抜けなくなった時点でチューブを抜き去ります。今回のケースは、かなり体重が落ち痩せていましたので、直ぐに栄養を補う為に食道カテーテルを首に装着しました。
●膿の培養、同定
左右の胸から抜けた膿です。採取した膿は、遠心分離をかけその沈査をグラム染色とライトギムザ染色を行い細菌を大まかに絞り、抗生剤を選択し投与を開始します。同時に検査機関へ培養を依頼し、菌の正式な同定を待ちます。猫で分離される細菌は、Pasturella multocidaやBacteroides sppなどの口腔内常在菌が最も多いと言われます。この間約7日間の待ちですが、もう少し短くならないかとイライラする時間帯です。
●考察
今回のケースは、5日間でチューブが抜けました。
食欲も旺盛になり、見違えるようになりました。麻酔時に心臓を検査した時に逆流症も見つかり、前向きに考えれば新たな発見があり良かったのかも知れません。
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炎症性ポリープ ”血便、侮るなかれ” [News]
●ダックスフンド ♀ ぺぺ 10歳
1年半前に便に血が混ざると来院されました。それから1年後、良便の後に必ず血が混ざると再度来院されました。頻度が高いので、この度は、詳細を調べる内視鏡検査を決心されました。
●内視鏡所見
肛門から直ぐにポリープ病変が観察されました。さらに肛門から10cmの部位では、点状出血が見られ。盲腸の手前から肛門の間の計4か所で組織を採取し病理検査へ提出することにしました。
●歯石除去
以前から希望されていた歯石除去をようやく実現することができました。
しかし、残念ながら既に歯肉は後退し、歯の根が露わに出現してしまう状態になっていました。もう数年早く処置をされていれば・・・・残念です。
●病理検査
粘液分泌亢進を伴う、直腸と結腸の炎症性ポリープと慢性リンパ球、形質細胞、カタール性結腸炎でした。ダックスフンドは、直腸と結腸に炎症性ポリープを発生しやすい犬種と言われています。この病気はアメリカでの発生は少なく、これから研究、解明されるものです。
●治療と教訓
今後の治療は、外科手術もありますが、まずは食事療法をしっかりとするか、免疫抑制剤を使用するかは、飼い主さんと話し合いをして決めたいとおもいます。
血便が出る場合には、腫瘍、炎症性腸炎などの可能性があります。できるだけ早めに検査を受けることをお推すめします。”血便、侮るなかれ”
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貧血の原因は胃潰瘍。 [News]
●散在する胃潰瘍
胃を開けてみると、大量に停滞した食物の処置に時間を要しました。なぜ、食物が大量に溜まってしまったのか?原因は、フエルト状の異物でした。そして、その影響で食べ物が長期に停滞し、散発する潰瘍が発生し、その潰瘍からの持続的出血により重度の貧血につながったと考えられます。今回の来院まで、かなりの時間かかっています。飼い主さんは、食欲があるから安心されていましたが、明らかに痩せてきていました。後手にまわってしまった手術が悔やまれます。
●胃の穴
十二指腸に入る手前の胃に大きな穴が開き、既に腹膜炎が発生していました。腹水を培養検査に送り、大量の生理食塩水で腹腔内を洗浄し、潰瘍部分を切除して縫合しました。
●潰瘍
胃の中に多数存在した潰瘍です。一部は深く上記のように破れていましたが、今後この潰瘍が速やかに治癒してくれることを願います。通常どおり、この切除部分は、病理検査へ提出します。
●胃内容
飼い主さんの話によると、食べ物は数日前に与えた内容らしく、長期に胃に停滞していたことが考えれらます。その原因は、上記にも紹介した右側のフエルト様の端切れでした。飼い主さんには、覚えが無く、どこで食べてしまったか分かりませんでした・・・・。
●考察
初診で著しい貧血と血液の再生像が見られました。再生がみられる貧血は、@失うかA壊れるかです。尿、腹部における血液の存在はなく、消化管出血の指標である血中の尿素窒素は正常でした。よって、最初は、自己免液疾患を中心にすすめていました。しかし、黒い便の存在から展開が変わりました。再度、腹部超音波を見ると、著しく拡張した胃と腹水の存在。そしてその胃の中には、さまざまな映像が入り乱れていました。麻酔をかける状況ではありませんでしたが、内視鏡検査で異常を確定し、腹部切開へ移行しました。強硬な緊急手術となりましたが、無事に終わりなによりです。これから、回復に向けて腹膜炎の問題、存在する潰瘍の問題が残りますが、退院にむけて精一杯力を注ぐつもりです。