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犬の慢性血尿2(移行上皮癌の疑い) [News]
●ラム ♀ 12歳 シェットランド・シープドッグ
「4か月前から血尿と頻尿が続く」「耐性菌ができたのでは?」とセカンドオピニオンを求めて来院されました。
早速、陰部を拝見すると血尿らしきものが付着していたので、身体検査後に超音波検査を行いました。
●超音波検査
今回のケースでは、既に膀胱のほとんどが侵され、片側の@尿管の腫瘍浸潤あるいはA膀胱三角部の腫瘍による閉塞により閉塞が起こり水腎症を発症していることが考えられました。
上は膀胱内でカリフラワー状に育った腫瘍です。
下は尿管閉塞による水腎です。
●移行上皮癌
細胞診の結果、移行上皮癌を最も疑いました。
下部尿路における悪性腫瘍は全体の1%といわれ、その中でも移行上皮癌が最も発生率が高いといわれます。
移行上皮癌は、シェットランド、シーズー、ビーグルなどが好発犬種であり、発見された時点で既に激しく進行している場合が多くあります。早期に発見され、膀胱三角部(尿管が開口している部位)がおかされていなければ、積極的な膀胱切除により予後が良い場合があります。
●外科手術の介入
膀胱を全摘出して、尿管を腸に移設する手術の選択肢もお話しましたが、年齢を考慮して出来るだけ痛み、苦しみの少ない生活を維持できることに重点を置く内科治療を選択されました。
よって、最終診断である膀胱から組織を採取し病理検査を行うことは望まれず、その費用を内科治療に回すことになりました。
犬の慢性血尿 [News]
●マロン ♂ ゴールデン 11歳
「明らかに分かる血尿がいつまでも続く。」主訴でセカンドオピニオンを求めて来院されました。精密検査に乗り気でなかったのですが、著しい血尿により急速に貧血が進み蛋白質が低下したため、飼い主さんの重い腰が上がりました。そして、本格的に検査を行うことになりました。
●超音波所見
拡張した腎盂とその中に血餅様所見が見られました。
●レントゲン造影検査
腎臓摘出を目的に片側の腎臓が機能しているかどうかを造影により確認しました。
●摘出腎臓
腎臓を割ってみると、大きな血液の塊(血餅)と血栓がみられました、肉眼的には明らかな腫瘍は発見できませんでした。
●病理検査とまとめ
結果は、悪性腫瘍である腎臓の血管肉腫でした。腎臓に小さな腫瘤病変が点在していたことから、肝臓(手術中に肝臓の腫瘤病変がきになった)、腎臓、右心耳などに好発する血管肉腫の転移が考えられと思われます。これより、免疫を上げ心地よい余生を過ごしてもらいたいと思います。術後20日した現在、血尿が止まり、貧血は改善、蛋白も上昇していました。
飼い主さんに、気をつけてもらいたいことは、「見た目は黄色でも血尿がある!」「血尿と侮るべからず、明らかに異常である!」「継続する血尿は検査で追究すべし!」です。
猫の急性腎不全 [News]
●ピー 日本猫 ♀ 10歳
慢性腎不全と診断され、セカンドオピニオンを求めて来院されました。見るからに状況は深刻でした。嘔吐を繰り返し、虚脱した状態でしたので、尿毒症も疑い血液検査を行いました。
結果は尿毒症、原因を探るべく超音波検査へ進みました。
●超音波検査
左右の腎盂(尿が集まる受け皿)の著しい拡張と結石が見つかりました。尿管の拡張は見られなかったため、腎盂結石による閉塞、そして尿毒症に進展したことが考えられました。
●3日後
腎臓にカテーテルを固定して急性尿毒症を回避しました。初日の表情とは見違えて機嫌が良く、食事も取れるようになりました。
●レントゲン所見
造影検査を行うと右の腎臓が機能していないことが分かりました。腎臓切開手術を行うと少なからず腎臓の組織がダメージを受けます。最大で見積もっても全体の50%しか機能してない残された腎臓にメスを入れる訳ですから、できるだけダメージの少ない手術を行う必要があります。理想は腎盂切開による摘出です。
●手術
7日後に手術を行いました。
腎臓皮質の切開を考えていましたが、片方の腎臓しか機能していないので、避けたいアプローチでした。幸いにも腎盂切開を行い、カテーテル部分から洗浄を繰り返し結石を取り出すことに成功しました。
残念ながら尿管部分に結石の破片が詰まり、急遽尿管を一部切断して、新たに膀胱に移設することになりました。
術後は急性腎不全となりましたが、5日後の現在はほぼ正常に復しつつあります。
ピーちゃん本当にお疲れ様でした。心配しているお母さんのもとに一刻も早く帰宅できるように頑張りましょう!