News
猫の肝リピドーシス [News]
●クー 日本猫 6歳
主訴は「4日前からの嘔吐」でした。飼い主さんは脱水を心配してストローで水を飲ませていたそうです、しかし、飲ませながらも嘔吐は続いていました。食欲はありません。
●肝リピドーシス
肝リピドーシスとは、飢餓状態に陥ると脂肪分解がおこり、その遊離した脂肪酸が肝臓の細胞にとりこまれ蓄積した状態を言います。特に肥満した猫では、原因にかかわらず、数日(2日)以上の食事摂取量の低下により肝リピドーシスの危険性が高まります。
●検査
血液検査では、黄疸と肝酵素の上昇、奇形赤血球の出現、凝固異常などです。
有効な検査は、超音波で肝臓を観察する、また超音波を用いて肝臓に針を刺して細胞を吸引、観察することです。
以下は、肝臓穿刺で得た細胞写真です。
●治療
まずは、速やかに嘔吐を止めて、食事を給与することです。早期に栄養給与を開始すれば90-95%の回復が見込めると言われます。また、食欲不振におちいった基礎疾患(胆管炎、膵炎、炎症性腸炎、腫瘍など)を合わせて追究する必要があります。
関連タグ :
猫の口腔内疾患 その2 [News]
●トム ♂ 14歳 Mix
「顔が著しく腫れて右目から赤い目やにが出る!」主訴で来院されました。麻酔下で咬傷、口腔内の検査を詳細に行うことにしました。
●口腔内検査
右上顎犬歯の歯肉部分が赤く、軽度の腫脹みられ、圧迫することで歯肉から血膿が染み出すことが分かりました。
●レントゲン撮影
プローブで歯肉のポケットを検査しても正常でしたので、根尖部観察のためにレントゲン撮影を行うことにしました
●ドレイン装着
レントゲン撮影では、根尖部は綺麗で膿瘍形成時の黒抜け像もありませんでした。そこで、歯肉を剥がして軟部組織の検査を行いました。擦ると広い眼下部にスペースがあり、その部位を洗浄すると下眼瞼の結膜から洗浄液が排出され穴が発見されました。
●結論
今回の症状は、歯の問題ではなく、咬傷あるいは外傷により眼窩部が感染を起こしたようです。
前回の「猫の口腔疾患その1」では、犬歯の根尖部膿瘍でした。今回のその2では、外観は類似所見でも、原因がまったく異なっていました。検査、レントゲン撮影を行うことなく安易に抜歯してしまっては、大切な歯を失うことになります。麻酔下で詳細な検査を実施する意味ここにあります。
猫の口腔内疾患 その1 [News]
●口腔内疾患
猫の代表的な口腔内疾患は、口内炎です。
今回の主訴は「食べたいけれども食べれない、食べると口を痛がる仕草をする」でした。口腔内の詳細を検査したくとも口を開けることにひどく抵抗するため、検査と処置を含めて麻酔をかけさせていただくことにしました。
●歯肉腫脹
主訴と抵抗感から口内炎と予想をしていましたが、口内炎、口峡炎共に存在しませんでした。歳の割に歯石もほとんどなく綺麗で歯の動揺も見られませんでした。
しかし、右の上顎犬歯部における軽度の腫脹と歯肉の一部の凹みが観察されました。
そこで、レントゲン写真を撮影をしてみると.....。
歯槽骨が溶解し、歪な象牙質、黒いスペースが見えました。
この写真から膿瘍と歯肉縁下の歯石堆積を疑いました。
●抜歯および処置
抜歯した犬歯です。
外に出ている部分には、ほとんど歯石がみられないのですが、歯肉縁下には多量の歯石と膿が付着、堆積していました。歯肉を切開剥離し、歯槽骨の一部を切削し、洗浄を繰り返しました。膿が著しいため、縫合は時期をずらすことにしました。
●その他の疾患
口が痛くて長期に渡り食べれず痩せているのかと思いきや、食べれなくなったのはつい最近のことだそうです。怒りっぽい性格と著しい削痩状況から甲状腺ホルモンの測定をお勧めしました。予想通り甲状腺ホルモンレベルが高く、甲状腺機能亢進症と診断できましたが、治療用の食事は好きではなく、また薬も飲まされない状況では、せっかく診断が下っても悩ましい問題が残ります。