大変でした!550gの横隔膜ヘルニア [院長ブログ]
●サクラ2カ月♀三毛猫
横隔膜ヘルニアとは、胸と腹を分けている薄い膜が破れて、お腹の臓器が胸腔内へ入り込んでしまう状態を言います。
この度、小さな子猫が呼吸困難で運び込まれました。しばらく経過を観察し、状態を改善させてから手術を行う予定にしました。
肺は空気で充満されていますから黒く映ります。しかし、腹部臓器がたっぷり入ったサクラの肺は圧迫され、左の後葉の一部分しか空気が存在していません。呼吸困難でかろうじて生きています。食事は食べたいのですが、呼吸が苦しくて一口食べただけで死にそうになります。一刻の有余もないので、緊急手術に踏み切りました。
●ヘルニア穴
まずは、麻酔管理が大変でした。呼吸できる肺が少ないので、十分に酸素化して血管から麻酔薬と鎮痛薬を投与しました。ここからが、また大変で胸が思うように膨らみませんから、小さな胸の膨らみをみながら、呼吸を調整していかなければなりません。
安定させた所で、急ぎ手術室へ運びます。
たぶん、交通事故だと思われますが、横隔膜の50%ぐらいに大きな穴が開いていました。その穴を通じて、肝臓、小腸、膵臓、胃が入り込み、肺を圧迫していました。小さな体ですので、指をいれるだけでスペースが無くなります。注意深く臓器を取り出して、大きな穴を閉鎖。お腹を閉じる前に胸の空気と液体を抜くためにカテーテルを挿入しました。
●術後
手術中に一時期、血圧が低下することもありましたが、急いで手術を進めました。術後の覚醒は順調でしたが、酸素濃度が低めです。急いで鼻に酸素チューブを装着しました。小さな体(550g)で本当に良く頑張りました!しかし、術後しばらくは、体温、血圧、酸素濃度を定期的に測定します。気が抜けません!
●ICU
数日間は、集中治療室で管理します。前足から鎮痛剤と細胞外液が持続的に流れます。足先には、酸素濃度を観察するモニターが装着され、胸のチューブからは、肺の隙間に存在する空気と液体を抜きとります。傍には、応援団のスヌーピーが寄り添います。
●術後のレントゲン
呼吸も落ち着き、胸からの空気、液体が抜けなくなったので確認のレントゲンを撮りました。
最初の写真と比べると胸の大きさも格段小さくなり、何より肺に空気(黒)が入っているのが分ります。食欲も日に日に出てきています。これで一安心です。
●五日後のサクラ
呼吸が苦しくて食事がとれなかったサクラは、術後5時間で美味しそうにミルクを「ペロペロ」と飲みました。翌日は、「みゃ〜」と可愛い声で応えてくれ、流動食も「ペロリ」。揉み揉みしながら喉もなでてくれと催促します。この写真は術後5日後です。見違えるように元気になり、呼吸も安定しています。数日後に退院です。元気でね〜!
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元から断たなきゃ駄目! [院長ブログ]
●オーマイガット!潰瘍も発見!!
ダックスフンド 11歳 ゲット
最近の当院のホームページをご覧になって、同じような状態と感じ、急いで来院されました。歯石が大量に堆積した影響で、その歯石の上にかぶさる唇に潰瘍ができてしまいました。かなり痛みのある日々が続いていたと思います。また、大量の歯石が堆積し、まるで山口県の秋吉台の鍾乳洞の様です。
●エナメル欠損と残根
歯の表面は固いものを砕く為にエナメル質で覆われています。そのエナメル質の一部が無くなり、その下の象牙質が溶けて折れてしまい、根だけが残ってしまいました。歯の根が残ると炎症が治まらないので、高速バーで周囲を削って摘出します。
●残根
抜歯した数本の歯と3本の骨に残っていた歯の根です。
●歯周靭帯喪失
歯肉の深さを測定します。検査の手順に含まれる一つですが、ご覧のとおり検査プローブがどこまでも入ります。
鼻の腹側の骨は薄く、歯の根の部分で感染がおこると鼻と歯がつながり、くしゃみが持続的に発生します。ここまで歯石がひどいケースでは、多くの歯の根に歯石が侵入して歯と歯肉を繋ぐ靭帯を破壊してしまいます。
●ただよう香り
ここまで、酷いと臭いも相当なものです。歯石除去後は、当然匂いも無くなり、どぶの香りからサフランの香りに変わりました。飼主さん共々さわやかな日々を送れることはとても素晴らしいことだと思います。次に大切なことは、この状態を維持することです。食事の変更と歯磨きは必須事項になります。
ということで、数m離れていても漂う香りは、歯石と口内炎が原因でした。飼主さんには、匂いの元に早く気付き、その匂いの元を断たないと解決しないことをもっと早くから気付くべきであったと後悔されていました。今日から頬ずりも気持ち良くできると思います・・・・。
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骨盤拡張術 [院長ブログ]
●猫の巨大結腸症
巨大結腸症は、拡大した結腸に大量の便が停滞している状態で、ほとんどが後天性です。主な原因は、交通事故などにより骨盤骨折が生じ結腸が圧迫されて、その手前で大きくなってしまいます。また、原因不明で突発性の場合もあります。
●チビ11歳 日本猫
チビちゃんは、10年前に自家骨を使用してで骨盤拡張術と拡張しきった直腸を切除する手術を行いました。3年前よりふたたび便が溜まり腸が拡大するようになりました。そして、麻酔下で便をとりだす作業が数年続くことになりました。高齢で2度目の手術になるので、なかなか踏み切れずにいましたが、この度、飼主さんの覚悟が決まり、再手術になりました。
●巨大結腸症の治療
便を緩くする薬、食事などで対処しますが、反応の無い場合には、結腸切除術、骨盤拡張術を行います。
チビの1回目の手術は、異物で無くできるだけ自分の物でという考えで、チビの骨を利用して拡張しました。しかし、7年間の間に吸収されてしまい再び狭窄をしてしまいました。今回の2度目の拡張手術は、骨盤の真中に特殊プレートを挿入して固定することにしました。
●成功、成功!
3年前から自力で大きな便が出たことが無かったチビですが、今回の手術後初めて「モアイ像」の様な巨大な記念すべき便を出すことができました。まだ、少し足に浮腫が残っていますが、これは、数日後に無くなると思います。
手術の成功に乾杯!そして、今後のチビの人生が快適であることを祈って、再び乾杯!



















