「小さなイボがこんなことに」の続き。 [News]
●アメリカンコッカースパニエル、11歳、♂、ジョイ
先ずはじめに、ショッキングな写真でスイマセン。
皆さんに注意を呼び掛けるつもりで、あえて載せました。
4年前から全身にイボができはじめ、この春から一部が巨大化したそうです。手術をお勧めしましが、なんとか手術をせずに治したかったそうで、出血がひどくいよいよ管理ができなくなって来院されました。
●足にも
足にも同じような病変が存在しました。頭よりさらに広範囲です。
●凍結療法
何といっても血液のついた毛で固まってしまった患部を綺麗にすることに時間を要しました。切除も検討しましたが、あまりに患部が汚れているので(蛆も住んでいた)先ずは、凍結で腫瘍を小さくし、周辺の皮膚も落ち着いた所で、切除手術をすることにしました。上手くいけば手術をしなくても済むと思います。
●足も同じく
周辺を綺麗にして、頭と同じく凍結処置をしました。凍結処置は、組織を−20度に凍らせて壊死させ、脱落させる方法です。
●別人
約2週間すると、この出来物が取れる予定です。暫くの間は、組織が壊死することで、再び汚くなりますが、少しの辛抱です。顔を触ると咬みつくのでまったく管理ができなかったようで、処置前は目がどこにあるのか分からない状態でした。毛刈り、洗浄を繰り返し、そして、炭酸ガスレーザーによる多数のイボ取りを行い、見違える様に可愛い顔になりました。
●足も綺麗に
足周辺も同じく、血液の付いた毛玉でとことん覆われていました。1時間もあればと思っていましたが、この全ての作業に4時間も費やすことになるとは・・・・処置後の麻酔の覚めは驚くほど速く、飼い主さんも再会時に大喜びで、当日の夜に元気に帰宅しました。これから2〜3回麻酔を行いながら、体全体を綺麗にし生まれ変わる予定です。続く・・・・。
●2週間後
2週間後の映像です。腫瘤の大きさは、1/4程になり、匂いはほとんど無くなりました。
●同じく
足も凍結した組織は脱落壊死して無くなりました。いつも頭と足からかなりの出血があったそうですが落ち着きました。暫く飼い主さんの都合がつかないので10月になってから処置を継続していきます。
続く・・・・。
関連タグ :
エルダ2のその後・・・。 [News]
●その後・・・・
9月14日の掲載記事の続きです。足にかかったワナを引きづりながら自力で帰宅、そして、指先を4本も失ったエルダちゃんのその後です。最初は、病院の入院環境に馴れなかったのですが、3週間も入院すると治療中もゴロゴロとリラックスできるようになりました。
●受傷、数日後
長時間挟まっていた遠位側は血行が断たれ組織が死んでしまいました。残された骨が痛々しく、残念ですが、この部分は後に除去する事になります。
●手術1回目(表)
傷が綺麗になった後の1回目の手術後の写真です。表の一部に皮膚の欠損部が見られます。
●手術2回目(表)
表の傷は綺麗に治りました。追加手術の必要はありません。
●手術1回目(裏)
こちら足裏です。表と同じく皮膚に足りない部分がかなりありますが、皮膚の再生を待ちたいと思います。
●手術2回目(裏)
足裏にパットを移植しました。この新たな(右側)のバットが生着すれば、生活には支障はなくなると思われます。帰宅出来る日も間近だと思います。
まずは、めでたし、めでたし!
関連タグ :
2度目も良く頑張りました! [News]
●2度目
1ヶ月前に乳腺腫瘍、子宮卵巣摘出術を行いました。今回は、残された反対側の乳腺腫瘍の摘出手術です。当院では、以前は片側全て、あるいは、1〜3、4〜5乳腺の組み合わせで摘出していましたが、現在は、極力局所摘出を行っています。そして、その組織を病理検査へ提出し、個々の腫瘍の形態(悪性、良性)を確認します。
●膣内の巨大腫瘍
膣内に大きな硬い腫瘍が出来ていました。この度、乳腺腫瘍と共に膣を切開して摘出しました。
●摘出後
今回も、乳腺腫瘍と膣の腫瘍摘出で20針程の大がかりな手術となりましたが、他に全身のイボを炭酸ガスレーザーで10か所除去しています。
●膣内腫瘍
膣内のほとんどを占有していた硬く大きな腫瘍です。尿道部分に位置していなかったので、生活には影響はなかったようですが、不快感は少なからずあったはずです。
●歯石除去(前)
今回も、前回同様いろいろと処置が多かったですが、前回からの飼い主さんの希望である歯石除去を行いました。検査では、切歯のエナメル欠損、上顎臼歯の歯肉欠損がみられましたが、脱落歯は見られませんでした。
●歯石除去(後)
15歳とは思えない歯の数でした。一部は歯肉が後退して根の出ている部分もありますが、この年齢まで歯がこれだけ残っているのは、立派です。定期的な検診と処置。そして、食べ物選びと歯磨きを正しく行うことで、多くの歯を高齢でも残すことが可能です。さあ、皆さんも頑張って!
●病理結果
乳腺は一部が悪性腫瘍でしたが、リンパ節転移はなく、完全切除がなされていました。
また、お尻の腫瘍は、悪性神経鞘腫でした。この悪性神経鞘腫(シュワノーマ)は神経鞘細胞由来の悪性腫瘍であり、成熟動物〜老齢の動物にしばしば発生します。発生部位として、前肢および尾に最も好発(それぞれ22%)し、その他関節部に多く発生します。臨床的には除々に大きくなる境界不明瞭の腫瘤として観察されます。多くは浸潤性に増殖するために再発率は非常に高く、また転移率は比較的低いそうです。
この度は、腫瘍と健康組織との境界は明瞭であったため一般的な状況に比較して予後は良いと予想されます。