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猫 根尖部膿瘍 [院長ブログ]
●おねえちゃん 15歳 ♀ 茶トラ
「突然、右頬が腫れてきた!」と来院されました。口を開けてみると怪しそうな犬歯があります。15歳ですが、入念に血液検査、胸部のレントゲンを撮影して、お年寄りに優しい麻酔を選択しました。
●歯肉に穴
犬歯の側面の歯肉に大きな穴が開いていました。歯の動揺があり、膿の排出も見られます。
●歯科レントゲン
レントゲンを撮影しました。歯の奥に黒く見えるのが感染巣です。感染巣の蓋となっている原因の歯を抜き排液・洗浄を行い、適した抗生剤を選択する必要があります。
●膿の塗抹
歯の奥から採取した膿を検査しました。白血球が球菌を貪食(食す)しているのが分かります。
●反省
歯は、定期的に検査とクリーニング、そして処置を行わなければなりません。歯が原因で髄膜炎、心内膜炎、膿瘍などになれば、命に係わることがあります。15歳と高齢になると麻酔をかけることを躊躇いがちになりますが、しっかりと手術前に検査(身体検査、レントゲン、超音波検査、尿検査)を行い、合格した後であれば、まず心配ありません。
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猫の下顎骨部分切除と形成 [院長ブログ]
●猫 10歳 ♀ ハナ
食欲、元気はあるが3か月前から「よだれ」が出るとのことで来院されました。
●腫大した顎
顎が固くなり、反対の顎と比較すると5倍ほどに大きく腫れあがっています。年齢的に口腔内腫瘍も疑わなければなりません。
●口腔内の粘膜欠損
口の中の粘膜の欠損もみられ、露出している骨は見るからに汚く変化しています。口の中に緑色の石様に見えるのが、汚くなった骨が露出してるところです。上の写真の穴の原因は、口腔内に生じた粘膜欠損により感染が起こり、上から下へ通じる穴が形成されてしまったのでした。
●レントゲン撮影
レントゲンは、歯科専用レントゲン装置を使用します。デジタルなので結果はすぐに目の前のモニターへ写し出されるので便利です。今回は、歯と骨の状況を把握しますが、他には埋没歯、歯根の感染、歯髄療法の進行状況を検査するためになくてはならに機材です。
右顎と比較すると大きく肥大し、骨組織がスカスカになった状況が観察されます。しかし、骨の強度は維持されていたので、腫瘍ではない可能性に期待したいと思います。
●骨の炎症
今回は検査を行うために、口腔粘膜を剥がし、上記の骨の一部を病理検査へ出しました。
数日後の結果は、腫瘍性の変化は無く「骨の炎症」でした。飼い主さんと話を詰めてから、後日下顎の部分切除を行う予定にしました。
●下顎部分切除
まずは、骨組織を培養検査へ提出する材料を採取する手順を進めました。骨が腐った部分(腐骨と呼ぶ)を正常の骨と分離して採取しました。
●フラップ形成術
今回の大きな穴を埋めるのには苦労しました。舌側の口腔粘膜は伸びないために使用できないため、頬側の犬歯、第3前臼歯を抜歯し、唇を広げて精一杯の大きさのフラップを作成しました。、
大きく膨らんだ骨を削除して、さらに唇に空いた板穴を塞ぎました。つまり、舌の直ぐ内側に唇が付いている形になりました。
●培養結果
骨の培養結果は、緑膿菌と大腸菌でした。現在処方している抗生物質では不十分なことが分かりましたので、これより変更して長期に投薬いただきます。
●まとめ
飼い主さんと言うものは
「本格的な症状がでないと、来院および手術されないもの」です。
もっと早く手術をしていれば、骨の感染も無く、ここまで大がかりな手術にならなかったと思うと残念ですが、これもいつものことです。この度、フラップ形成の為に数本の歯を失いましたが、これからは、顎が痛むこともなく、よだれも止まるはずです。ハナの快適な未来に乾杯!
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猫の口内炎 [院長ブログ]
●難治性口内炎
皆さんが悩まれる病気の一つに猫の難治性口内炎があります。歯に歯石が堆積することで、過剰な免疫反応が起こり口内炎、そしてエナメル、象牙質まで侵食してしまう病気です。このケチャちゃん(年齢不明)の場合は、手術までの一時期(2日間)ステロイドを投与したので、炎症がずいぶん治まって見えます。
●治療
炎症を抑制するためにステロイド投与も一つの考えですが、長期投与となると感染症、糖尿病、肝臓病などのリスクが高まります。また、このケースでは、ほとんどの歯の頸部が侵食され痛みを伴っています。
この犬歯の部分を注目ください。実は過剰な免疫反応で歯が侵食され、頸の部分で折れ、その上を歯肉が覆ってしまっています。一見歯はなさそうですが、レントゲンを撮影すると根が残っているのがわかります。
●残根処置1
根がのこっているといつまでも炎症が継続するので、レントゲンで残根歯を確認し、全て取り除かなければなりません。
●残根処置2
案の定、犬歯の上を切開してみるとたくさんの残渣と膿が出てきました。
●犬歯の残根
ほとんどの根は溶けて崩れていましたが、この根尖部が残っていました。
●後臼歯
歯肉を大きく剥がして、歯の根を残すことなく全て抜歯します。このように大がかりな手技を行わないと、細い根尖部は残ってしまうことになります。
●縫合
上顎の全ての歯をきれいに完全除去し、炎症のある歯肉部分を切除してから縫合します。同じく、下顎でも同様の手技を行いました。
●まとめ
猫の難治性口内炎を治療する一番の方法は抜歯です。抜歯と言ってもレントゲンで全ての残根を確認し、取り残すことなく仕上げる必要があります。一見、炎症が著しくなくとも、歯が吸収されているケースでは、食事の際にかなりの痛みを伴います。人間でも、歯肉が下がっているだけでしみるのですから、歯髄がでていればそそれは、間違いなく痛いのです。
常日頃から口の中(奥まで)観察する習慣を身に着け、赤い歯肉をみつけたら、早めに検査にお越しください。
ちなみに、ケチャちゃんは、術後に痛みがなくなり、痛みを気にするこなくおいしく食事をいただけるようになりました。良かった、良かった!






















