心エコーセミナー [大和臨床研究会]
●11月23日(祝)超音波セミナー
久しぶりに超音波セミナーを開催しました。
講 師:北里大学内科学教室 堀先生
テーマ:心エコー検査(講義、実習)
参加者:9名
●感想
我が母校出身の若い先生でありましたが、シンプルに分りやすく超音波検査のコツをご指導いただきました。
私の今までのアプローチ法と異なり、少し戸惑いましたが余分な部分はそぎ落とし、必要な部分にさらに力を入れなければならないことが良く分りました。
皆さんお疲れ様でした!
腹腔鏡による卵巣・子宮摘出と肝臓組織検査 [News]
●ヒストリー
年に一度の定期検査(血液検査)を受けていたそうです。この度、更に詳しい検査を希望され広島から来院されました。過去の血液検査を拝見すると異常は見当たりません。しかし、7歳を超えていますので、尿検査と超音波検査をお勧めしました。そして、別日に予約を戴き、鎮静をかけてじっくりと検査を行うことにしました。
●超音波検査
予約いただき、鎮静後、超音波検査を始めました。
最初に肝臓からスタートして拝見するのですが、ここでいきなり肝臓の組織の均一性、色の異常に引っかかりました。次に脾臓と比較しても白っぽいことが確定できました。
続いて胃、脾臓、腎臓、副腎、卵巣、膀胱とすすめ、膀胱の下に液体の溜ったと思われる異常を見つけました。ループ状のつながりと解剖学的位置から子宮と断定しました。腸骨下リンパ節、大動脈分岐部、そして反対側の腎臓、副腎、膵臓、消化管、胆嚢と時計回りに検査を行いました。飼い主さんは、心配されていた通りの報告に驚かれましたが、「そのためにわざわざ遠くからきたのだから。」と早急に検査、手術を望まれました。数日後に、卵巣子宮摘出と肝臓の組織検査、胆汁培養の手術日を予約しました。
●術前準備
別室で腰から硬膜外麻酔を施し、通常の手術より広めに毛を刈られ、手術室へ運ばれます。腹腔鏡では、お腹にガスを入れて視野を確保しながら手術を行いますから、暖かいガスのおかげで体温が低下することはあまりありません。しかし、念のために手術用温風ヒーターも準備しています。(頭側の大きなホース)
●卵巣、子宮摘出
5mmの切開創から、カメラ、鉗子、メスを挿入してお腹の中で手術を行います。大きく膨れた子宮と卵巣をつかみ、超音波メスで止血、切断を行っているところです。出血は一切ありません。
このケースは、卵巣と子宮に異常があったために、一か所は1cmの切開創になりました。それでも術後の痛みは少なく、今回の様に、合わせて肝臓の組織を検査する場合には圧倒的に傷口が小さくなり、回復も早まります。
●肝臓採取
卵巣、子宮摘出術に続き肝臓の検査を行いました。見た目は、超音波検査の通り色が悪く、均一性を欠いていました。また、病変と思われる部位は瀰漫性に発生していました。
通常5か所の肝臓の葉からそれぞれ肝臓組織を採取していきます。この際に肝臓から出血がありますが、手術前に凝固検査(血の止まるか確かめる検査)を行うのはこのためです。そして、この肝臓を嫌気性、好気性細菌培養検査と組織検査へ提出します。
この小さな組織を検査することがとても大切なのです!
●採取胆汁
胆嚢(胆汁が入っている丸い袋)に針をさして、胆汁を採取し肝臓と同じく細菌培養検査を行います。
通常、結果は7日間程度必要となり、待ち遠しい日々が続きます。
●腹腔鏡の欠点、利点
まずは、飼い主さん側の欠点でありますが費用がかかること毛刈りの範囲が広がることです。病院側は、通常の切開と比較すると経費(器具、機材、人手)が掛ることです。人手に関しては術者、麻酔医、助手が訓練されていないとこの手技が成立しませんから、訓練に時間を要することも欠点になるのかもしれません。後は、特殊な機材を色々と使用するので後片付けが大変で、看護婦さんに苦労をかけることです(笑)。
利点は、間違いなく痛みが少ないことです。特に大型犬での卵巣子宮摘出術は、通常の 開腹では、卵巣の位置が深く苦労し、牽引痛が発生しますが、腹腔鏡ではその深さの影響は受けません。肝臓の組織検査では、5mm切開2カ所で多くの診断がつきますので、すごく有意義です。血液検査で肝臓が悪いとわかっても原因がはっきりせず、ただ強肝剤を飲むことになりますが、本当にその治療が適切かどうかが分かります。
つまり、組織検査をしないと状況が把握できないと言えるのです!
もっと、もっと、早い段階で積極的に検査をされることをおすすめします。
関連タグ :
予想以上にに深手でした。 [News]
●シャム 1歳 雄
今朝血だらけで帰ってきたそうです。
慌てて来院され、応急的に止血、消毒、抗生剤を投与し午後の緊急手術に無理やり組み込みました。飼い主のおばあちゃんも何とかしなければ思ったのでしょう深く切断された血だらけの足にバンドエードが一枚貼付けてありました。
●深い切傷
血液検査で異常が無いことを確認し、麻酔に入りました。飼い主さんは毛の生えた状態でしかみていませんので、皮膚を縫えば終わる程度に認識していたと思いますが、毛刈りをすすめ良く観察すると、皮膚、筋膜、筋肉、腱、神経と断裂していました。交通事故、喧嘩ではなく、鋭い例えばトタンの様な物に引っかかり切れてしまったことが考えられます。
●接合
さらに、洗浄を繰り返し、顕微鏡を用いて注意深く状況を観察しました。切断されていた4本の腱、神経、筋膜と慎重に相手を捜し、縫合を行いました。そして、骨にそわせて2本のドレインを装着しました。
●術後
何事もなったように閉じられていますが、ずいぶんと苦労をしました。
排液がみられなくなったところで、ドレインを外します。
●固定
腱を縫合しているので、足先を伸ばして欲しくありません。バンテージを装着し案定を保ちました。神経がいかに回復するかが問題ですが、前向きに期経過を観察したいと思っています。
この度は、受傷後に帰ってきたから良かったものの、飼い主さんに発見されなければ、動脈からの出血が止まらず、生死にかかわっていた出来事でした。
まずは、お疲れさまでした。