動画 腹腔鏡による子宮蓄膿症摘出術 [高度最先端医療]
●子宮蓄膿症
子宮蓄膿症とは、子宮内に膿がたまってしまう状態です。
膿の主なる原因菌は大腸菌です。発情時に分泌される黄体ホルモンが子宮内膜の増殖を促し、その増殖を起こした内膜に陰部から侵入した菌が感染を起こすことが始まりです。
発情1カ月後から症状が出現することが多く、開放性の場合は、食欲、元気が軽度に落ちる低度の場合もあり、診断が遅れることがあります。飼い主さんが気が付く症状は、いつも陰部を舐めている、多飲多尿などです。閉塞性の場合は、症状が強く出ることが多く、発熱、食欲不振、嘔吐、脱水などが見られ、放置すると敗血症、DICなどに進行して死亡します。
●腹腔鏡下摘出術
手技は、通常の不妊手術と変わりませんが、余りに大きく膿がたまってしまった子宮の場合は視野がさえぎられてしまい、手術ができません。中程度に貯留した膿であればお腹の中での手術が可能です。通常の開腹手術に比べて傷口は当然小さくなりますので、腹腔鏡を使用することで痛みの軽減につながります。
動画 腹腔鏡による肝臓生検と胆汁採取 [高度最先端医療]
●肝臓の検査
肝臓の検査は、血液検査、超音波検査と思われている飼い主の方が多いのですが、肝臓の病態を把握するためには、肝臓そのものを見なければなりません。
つまり、肝臓の一部を切除して病理検査で判定する必要があります。
●腹腔鏡を始めた契機
私が腹腔鏡を取り入れたいと思った契機は、肝臓を正しく診断したいとの思いからでした。血液検査で肝臓の酵素(人間でおなじみのGOT,GPTなど)が上昇していれば肝臓が悪いと言われます。そして、食事療法、肝臓薬を処方されるのが通常でした。しかし、血液検査の値は、他の病気でも上昇し、正しく薬を飲むためには肝臓の状態を知る必要があるのです。
ということで、肝臓病を診断するためには組織検査を行う必要がどうしてもありました。以前は、お腹を開けて肝臓の一部を採って検査していましたが、飼い主さんの抵抗は強く、肝臓を取るだけの為に大きな切開をすることをほとんどの方が好みません。
なんとか、飼い主さんに検査に踏み切ってもらえる方法は無いかと考えたのが腹腔鏡を使用した検査でした。
「大きく切らないのであれば検査して欲しい!」飼い主さん曰く
8年前からは、5mmの穴2ヶ所で肝臓の組織採取と胆汁採取による細菌培養検査を行うことができるようになり、正しく診断できるようになり、また飼い主さんの抵抗感が少なくなったたことが何より嬉しく思います。
●数値、画像だけで判断しないで!
上記のとおり、血液検査だけで判断していけないことはお分かりいただけたと思います。超音波検査では、残念ながら映像での異常は分かっても診断はできません。
診断には、やはり組織検査が不可欠で肝臓を取って組織検査を行わなければなりません。
●肝臓は沈黙の臓器
見た目が元気であり、食欲があったとしても、血液検査で肝酵素が高い場合には、精密検査を行う必要があります。
後手に回らないために早めの検査を絶対にお勧めします!
動画 腹腔鏡による避妊手術 [高度最先端医療]
●腹腔鏡外科および処置
今や、人間の婦人科、消化器外科では腹腔鏡を用いる手術が一般化されるようになりました。当方も平成16年にスタート(当時は全国で3件実地)し、現在症例数800を数え、手術時間も短縮され、痛みの少ない手術として多くの患者さんに喜んで戴いています。今回、改めて動画を交えて腹腔鏡およびその他内視鏡症例を紹介しながら低侵襲、低処置をご理解いただければと思い企画しました。
●麻酔手順
麻酔手順は、通常の手術と同じです。
@身体検査、血液検査、尿検査
A胸部レントゲン写真
B(超音波検査)
C麻酔前投薬
D静脈確保
E酸素化、麻酔導入
F気管挿管
G麻酔維持
H硬膜外麻酔
I手術
●手術
完全滅菌下で4台のモニターを見ながら手術を行います。
●手技
手術に使用する穴は3か所、5mmです。
その穴からガスを注入してお腹を膨らまします。
●手術動画
お腹の中で、左右の卵巣を把持し、卵巣動静脈を切断、シールします。出血はありません。子宮は頚管部分で切断します。
●術後の傷
術後の傷は、わずか5mm3か所です。
●術後4時間
術後数時間の動画ですが、注目すべきは動物の動きです。
手術数時間でソファーから飛び降りたり、歩いたりすることは通常の手術では得れません。痛みがほぼ無いことをご理解いただけると思います。