猫の口内炎2 [News]
●ウララ 11歳 ♀ 三毛猫
「出血し、食欲がなく、よだれを出し、前足で口を掻く」主訴で来院されました。口の中は、痛々しく変化していました。
炎症著しい肉芽病変は、口の側方からはみ出していました。
●口頬部の痛々しい炎症病変
●口内炎治療と対策
口内炎の原因は長期に渡る細菌に対する自己免疫による炎症反応です。治療は、抗生物質、免疫抑制剤、インターフェロンなどがありますが、最も効果的なのは全ての歯を抜歯する外科処置です(80%改善)。外科で特に気を付けなければいけないのは、抜歯作業中に歯の小さな根が折れてしまう残根の問題です。この歯根片を残してしまうと、術後再発の可能性が生じるので熟練した手技が必要となります。
全抜歯に抵抗を持たれる飼い主さんが多く、そのお気持ちは十分に理解できます。しかし、長期薬物管理の副作用を考えると積極的に外科を考量する必要があります。また、抜歯後は、歯が無くとも食事は通常通りいただくことが可能です。
●1ヶ月後
今回は、舌根部に膿瘍を形成してしまいました。ようやく飼い主さんが重い腰を挙げ、全抜歯の許可をいただく事ができました。全抜歯は、この状態が治まり次第行う予定です。
●口腔学セミナー
先般、歯科学の権威者の一人あるペンシルバニア大学のDr.Harveyが来日されました。猫の口内炎についてDr.Harveyも「現段階では、最後の手段ではなく、一番に選択すべき手技である!」と仰っていました。
私のしつこい質問にもかかわらず、丁寧にお答えいただき、数々の歯科の問題点が消化され、明日への臨床に大いに役立つご教授をいただきました。感謝。
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猫の黄疸2 [News]
●ビゼー 1歳 ♂ 日本猫Mix
猫の黄疸の原因は様々あります(以前の猫の黄疸1を参照ください)が、今回の原因は、赤血球に寄生するマイコプラズマにより著しい黄疸を呈した例です。
「散歩に出て帰宅すると黄色くなっていた」が主訴でした。血液量11%(正常値 >28%)、総ビリルビン量27.7(正常0.1-0.4)、体温39,2度。元気、食欲なし。
●口唇部
早期に黄疸を判断するのは、目の結膜、口腔内の軟口蓋部領域を観察するのが良い場所ですが、今回は、どこを見てもまっ黄色で、一目でわかる重症例でした。
●内股部
●血液塗抹
血液を一滴スライドグラスに垂らし薄く延ばし、赤血球を1000倍で観察します。赤血球がまばらに見えるのは貧血を物語っています。真ん中の青い塊は血小板、左端の青い濃い塊は白血球です。
赤血球の縁に見える青く丸い小さな点がマイコプラズマです。
●治療
治療は抗生物質を投与し、全身状態、血液量、血液の寄生虫の状況を判断しながら投与期間を決定します。約1ヶ月の処方で、血液量は25%に回復。食欲、元気も改善しました。
犬の口蓋裂 [News]
●ダックスフンド ♂
口蓋部分は、硬口蓋と軟口蓋が存在します。以前に硬口蓋における手術をさせていただきましたが、術後からも状態は変わらず、泡状の鼻汁が出続けていたそうです。この度、再び残りの軟口蓋整復の依頼を再度いただことになりました。抱いている飼い主さんの顔が、泡だらけになる程に激しい鼻汁でした。
●アメリカ軟部外科専門医
上記の通り硬口蓋における口蓋裂は、以前に手術させていただいたのですが、軟口蓋部分における経験が無く、試みることを躊躇していました。この度、アメリカから軟部外科専門医 Mark Rochat先生(オクラホマ大学教授)が来訪された折に、その手技及びその手技が使えない場合の次の手段について、詳しくご指導いただく機会を得ました。
●術前
口を開けると大きく穴が開いているのが分かります。食事をする際、あるいは、唾液が鼻道に侵入しているため、持続性の炎症が発生しているのを認めました。
●術後
先天的に末広がりに拡大した穴を閉鎖しました。粘膜の緊張が強い場合には、諸々の処置をすることを指導いただきましたが、緊張感は、見た目より緩く定法通り閉鎖することができました。
Mark先生のご指導により安心して手術を行うことができました。術後の状態も良く、著しい鼻汁は一切消えました。飼い主さんに長らくご迷惑をお掛けしたことをお詫し、また、再び私にチャンスを戴けたことに感謝申し上げます。