外科:猫の乳腺腫瘍 part2 [News]
●乳腺腫瘍
猫の乳腺腫瘍は、犬と比べると発生数は少ないのですが、80%が悪性です。一般的には、摘出後に抗がん剤療法を行うとされますが(当院では、ご選択いただきます)、このミーちゃんの場合、全く我々に触らせません。そして、いったん怒り出すと手がつけられなくなります。
●胸部レントゲン
腫瘍の摘出手術前には、必ず胸のレントゲンを撮影します。もし、肺への転移が見られた場合には、腫瘍が破裂していない限り摘出手術は行いません。
上下の胸部レントゲン写真では、肺に転移像は認められませんでした。
上の写真の右側、下の写真の下側に白く丸く見えるのが乳腺部の腫瘍です。
●片側乳腺全摘出術
乳腺腫瘍は局所に一か所の発生でしたが、猫の場合には、ほとんどが悪性の為、リンパ節を含めて片側すべて摘出しました。
●腋下リンパ節
脇の下にあるリンパ節です。やや大きくなっているのが気がかりですが、病理検査を待ちたいと思います。
●7日後の病理結果
予想どうり悪性の乳腺癌でした。
切除範囲は、完全で、軽度に腫大していたリンパ節には、転移がみられませんでした。しかし、猫の場合、悪性度は中等度で腫瘤も限局性でリンパ節への転移も観察されず、悪性度が低い乳腺癌であっても高率に転移することから、切除後も転移には十分な注意が必要です。ちなみに、10日後の抜糸は無事に終わりました。
●感想
犬、猫ともに、そして、悪性、良性にかかわらず、腫瘤をいかに小さな段階で発見して、そして、速やかに摘出することが肝(きも)になります。残念ながら、今回のケースは、かなり大きくなっていました・・・・。
最も大切なことは、腫瘍を発生させない体づくりですが、それには、飼い主さんの接し方、食事内容、性格を把握した対応をしなければなりません。まずは、元気なうちからご相談ください。
じゃじゃ馬子。 [お仲間紹介]
爪のできもの? [News]
●ラブラドル、♀
11歳なのに物凄く元気!話を伺うと、1年程前から指が腫れているそうです。抗生剤を処方してもらったが、腫れが少しは引くが痛みはおさまらないと、当院の飼い主さんのご紹介で来院されました。
●確かにデカイ!
隣の指と比較しても分るように、かなり腫れています。しかし、膿が出るわけでもないので、レントゲン撮影後、指の切断をお勧めすることにしました。
●レントゲン写真
基節骨(爪についている骨)が短く変形している像が見られます。レントゲンで見ると、いかに大きく(4倍)なっているのかが分かります。
●切断直後
レントゲン像を考慮して、先端部分だけでなく指の付け根から切除しました。特に歩行には、問題は出ませんので、一本指が無くなり寂しくはなりましたが、痛みが無いことがなによりだと思います。
●病理検査へ
腫れた指の部分の切断面を見ると、組織の変化が見られました。良性、悪性かは分りませんが、肉眼的に異常を感じます。病理検査の結果を待ちましょう。
●3日後の検診
今日は、術後3日後の検診でした。
傷は凄くきれいで、飼主さんの話では、前より痛みがなくなったせいか、動きが良い気がするとのことでした。良かったです!後は、数日後の抜糸に来院していただければ終了です。
●悪性腫瘍
病理結果は扁平上皮癌でした。「この腫瘍は、表皮を形成する扁平上皮細胞(有棘細胞)が腫瘍性に増殖する悪性腫瘍です。イヌでは約66%は口腔内に発生し、皮膚では約26%、その他乳腺、鼻腔内などにも発生します。皮膚に発生した扁平上皮癌は、口腔内に発生した扁平上皮癌と比較すると予後は非常に良好ですが、局所再発を示すことが多いと言われています。また、転移の頻度は比較的低いため、多くの症例では転移はありませんが、未分化で悪性度が高い場合はリンパ行性に肺に転移することが知られています。」との結果でした。予後に注意しながらご指導していきたいと思います。